第4回審査委員長総評

審査委員長総評

尾道市立大学経済情報学部 准教授 小川 長

 今年も夏が来た。夏が近づくと、今年ももうすぐ「ええみせじゃん尾道」が始まるなあと思うようになった。それもそのはずで、当初は尾道商工会議所の若手職員たちの企画で始まった「ええみせじゃん尾道」が、今年ですでに4回目を迎えることとなった。毎年の彼らの努力の甲斐があって、年々推薦の数が増え、今年は自薦他薦あわせて71通、51軒の店舗がエントリーされた。その中から一軒一軒、厳正な予選審査と本選審査を経て、今回5店舗の表彰店を選び出した。
 今年も、百年以上の伝統を持つ老舗から、この一年の間に生まれたフレッシュなお店まで、幅広い種類の店舗が推薦されてきた。こうした傾向は毎年続いているので、尾道の人は当たり前のように思うかもしれないけど、考えてみると、これは実にスゴイ話なのである。まず、毎年こんな感じで歴史ある老舗が当たり前のように推されてくる一方で、出来立てホヤホヤのお店も当たり前のように推されてくるなんてことは、日本全国探してもそうそうあるもんじゃない。さらに驚くのは、言ってみれば超ベテランのお店と超新人のお店も交えた、さまざまなお店が同じ土俵の上で勝負しているのに、まったく違和感がないことである。これは、決してコンテストのことだけを言っているんじゃなくて、実際にも尾道の町では新人から超ベテランまで、いろいろな種類のお店が取り立てて分け隔てもなく調和しながら商売をしている。さすが、商人の町尾道である。でも、尾道では、これが当たり前の風景なのである。
 「海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい。・・・私は涙があふれていた」。尾道ゆかりの小説家、林芙美子の「放浪記」のよく知られたこの書き出しは、何度読んでも胸が熱くなる。これを読むと、あの狭い尾道水道の風景が目に浮かぶ。いつも穏やかで変わることのない、懐かしい尾道の印象的な風景である。ボクは、この尾道水道の風景はそのまま、尾道の町やお店と同じ風景なんじゃないかと密かに思っている。と言うのは、昔からいつも穏やかで変わらない尾道水道の風景だけど、そこを流れる潮は常に変わり続けているし、この小さな水道を行き交う船も、いつもと変わらない風景だけど、水道を通り過ぎていく船は、その時々で異なった船なのである。つまり、尾道の町もいつも懐かしい、旅人にとってさえもなぜか懐かしい、昔から変わらない町だとみんな思っているし、それこそが尾道の町の魅力なんだけど、実は、尾道水道の潮のように、そして、そこを行き交う船のように、尾道のお店はいつも新しい変化を交えながら、この変わらない尾道の町の風景を作り続けているんだと思う。
 今回選ばれたお店が、こうした尾道の、尾道らしい風景を作っている代表的なお店であることに間違いないと、ボクは心から思っている。