審査委員長総評
尾道市立大学経済情報学部 准教授 小川 長
全国1,000市区町村を対象に、毎年「ブランド総合研究所」が実施している『地域ブランド調査』の2014年における市区町村ランキングを見ると、尾道市は全国36位となっている。36位というと、何だか中途半端に感じるかもしれないけど、小さな尾道の町が全国1,000の市町村の中で上位5%の中に入っているんだと思うと、尾道市民としてとっても誇らしい気持ちになる。
因みに、上位100位の市区町村のランキングを見てみると、広島県内では他に広島市が94位にランクインしているだけだから、何だかスゴイ気がしてくる。また、中国地方5県の中でも100位以内にランクインしている市町村は6市しかなく、その中で尾道市は、21位の出雲市(島根県)に次いで中国地方で2番目(…ちょっと悔しいけど)となってて、3番目が43位の倉敷市(岡山県)だから、やっぱりスゴイなって思う。
こんな尾道の町で、尾道商工会議所が毎年開催している「ええみせじゃん尾道」も、始まってから今年で5年目という節目の年を迎えた。今年は35軒の店舗がエントリーされ、それらのお店を一軒一軒訪問し、予選審査と本選審査を厳正に行なって、今回6店舗の表彰店を選定した。
改めて選ばれたお店を見てみると今年も、全国的に名前の通ったお店から、フレッシュな感覚を発信しているユニークなお店まで出揃っていて、商都・尾道ならではの懐の深さ、裾野の広さを感じてしまう。どのお店も、とっても個性があって魅力的なのに、一人だけ目立っているわけじゃないと言うか、自分勝手な感じじゃないと言うか、どうもうまく言い表せないけど、尾道の町の中に溶け込んでしまっていて、それでいて尾道という町を形作っている欠かせない一部分であるという、そんな感じなのだ。
そう言えば、これって、まるで千光寺山から見える瀬戸内海の島々のようだ。千光寺山に登ると、眼下に大小さまざまな瀬戸内の美しい島々が見える。当然ながら、一つ一つの島は大きさも違うし、形も違う。造船所の大きなクレーンが建っている島があったり、湾の中に小さな集落を抱える島があったりする。橋でつながっていて、道路をスイスイ自動車が走っている島があるかと思えば、ポツンと浮かんでいる緑だけの小さく可愛い島もある。それぞれの島では、それぞれの島を故郷とする人たちが、今日もそれぞれの仕事をしながら、毎日の生活を営んでいる。それぞれの島で暮らしている人の文化や暮らしぶりは違うはずなんだけど、千光寺からみる美しい瀬戸内の風景はそれらさえも渾然一体となって、一つの美しいパノラマになっている。
きっと、尾道の町もこれと同じなんじゃないのかなって思う。尾道のお店は、一軒一軒扱っている商品やサービスも違うし、お店の規模も違うし、働いている人のスタイルだって違う。でも、それが一つ一つとっても魅力的で、個性的でありながら尾道の町に溶け込んでて、なぜか町全体が一つのパノラマになっている。そんなところが、いつの間にか全国の人を惹きつけてやまない尾道っていう町の魅力になっているんだろうなあって、ボクは考えている。今回選ばれたお店はどこも、訪れるみなさんを決して落胆させることはない店だと、審査委員長として胸を張ることができる。